箱庭療法とは何か?臨床心理士が解説するその効果と実例

箱庭療法とは?

箱庭療法(はこにわりょうほう)とは、砂の入った箱と様々なミニチュアのオブジェを使用して、クライアントが自由に風景やシーンを作り上げることで、無意識にある感情や心理状態を表現し、内面的な問題を解決していく心理療法の一つです。臨床心理士がカウンセリングや心理療法の一環として行うことが多く、特に子どもや言語でのコミュニケーションが難しいクライアントに有効です。

箱庭療法は、スイスのユング派の心理学者であるドーラ・カルフによって発展させられました。カルフは、クライアントが創り出す箱庭が、彼らの無意識の世界を象徴的に表すと考え、言葉にできない感情や体験を箱庭という形で表現することで、内面の問題を解きほぐす手助けができるとしました。

和歌山 臨床心理士

箱庭療法の具体的な進め方

箱庭療法は、クライアントが自由に選んだミニチュアのオブジェを砂の入った箱の中に配置することで進められます。臨床心理士は、クライアントが箱庭を作り上げる過程を観察し、作り上げた箱庭を元にしてクライアントの心理状態を読み解きます。

箱庭療法の手順は以下の通りです

箱庭の準備

砂の入った専用の箱(通常は木製で、底は青く塗られています)と、様々なミニチュアのオブジェ(人形、動物、建物、自然物など)を用意します。これらはクライアントが自由に選び、配置するための道具です。

箱庭の作成

クライアントは、自分のペースで自由に箱庭を作り上げていきます。この時、臨床心理士はクライアントに対して干渉せず、自由に創造させることが重要です。クライアントが選ぶオブジェやその配置、箱庭全体の雰囲気が、その人の無意識や心の状態を反映します。

作成後の振り返りと解釈

箱庭が完成したら、臨床心理士とクライアントがその作品を観察します。ここで重要なのは、箱庭の解釈を押し付けることではなく、クライアント自身に自由に感じ取ったことを話させることです。臨床心理士は、その中で見えてくるテーマや心の葛藤に対して、深く理解を深め、必要に応じてサポートを提供します。

継続的な箱庭作成

多くの場合、箱庭療法は1回のセッションで終わるものではなく、定期的に箱庭を作成していきます。セッションごとに、クライアントの心の変化や内面の成長を確認しながら進めていくことが一般的です。

実例:子どもの箱庭療法

ある子どもが学校でのいじめを受け、言葉ではうまく表現できない不安や孤独感を抱えていました。この子どもが箱庭療法を受けた際、彼は最初に恐竜や怪獣のミニチュアを箱の中央に置き、周りを取り囲むように高い壁や山を作りました。この配置は、彼が感じている恐怖や不安、そして自分を守ろうとする心理を反映していました。

セッションを重ねるにつれて、彼の箱庭は変化していきました。怪獣や恐竜は徐々に少なくなり、自然の風景や人々のミニチュアが増えてきたのです。これは、彼が徐々に恐怖や不安を乗り越え、心の平安を取り戻していることを示していました。臨床心理士は、彼の変化を見守りつつ、適切なサポートを提供し、最終的に彼は学校生活に再び前向きに取り組むことができました。

箱庭療法の効果と臨床心理士の役割

箱庭療法の効果は、クライアントが無意識に抱えている感情や問題を「視覚的」に外に出すことで、自己理解を深められる点にあります。特に、言語での表現が難しい幼児や思春期の子ども、トラウマを抱えた人々に対して有効です。

臨床心理士は、クライアントの作る箱庭を通じて、言葉では表現できない感情や葛藤を読み取り、それに基づいてクライアントを支援します。箱庭は、クライアント自身が自分の心を整理し、問題を解決する手助けとなる「鏡」としての役割を果たします。

結論

箱庭療法は、臨床心理士によって提供される効果的な心理療法であり、特に言葉によるコミュニケーションが難しいクライアントに対して有効です。無意識の感情を象徴的に表現することで、心の問題を可視化し、自己理解を深めるサポートをします。